『職場における化学物質管理』
平成26年10月23日、元従業員ら17名が胆管がんを発症(うち9名死亡)した印刷会社が、すべての生存患者や遺族と和解が成立した旨の報道がありました。
平成24年9月に発覚したこの事件は、特定化学物質障害予防規則など特別規制の対象となっていなかった1・2-ジクロロプロパンが原因物質とされ、大きな関心を集めました。同物質は、平成25年10月から特定化学物質として規制されていますが、化学物質管理の難しさを改めて認識した事件でした。
平成26年11月1日から、これまで有機溶剤中毒予防規則で規制されていたスチレンテトラクロロエチレン(別名パークロルエチレン)など産業界で大量に製造、使用されている9物質が特定化学物質として規定し直され、新たにジメチル-2・2-ジクロロビニルホスフェイト(別名DDVP)が特定化学物質に追加されました。また、労働安全衛生法の改正により、一定の危険性・有害性が確認されている化学物質(安全データシート(SDS)の交付が義務付けられている640物質)について、リスクアセスメントの実施が、努力義務から、新たに義務となりました(施行日:平成28年6月までの政令で定める日)。
具体的には、①安全データシート等を通じて、その化学物質の危険性、有害性を確認し、②各事業場でのその化学物質の使用量や取扱方法によってどのような労働災害が発生するおそれがあるかを調査し、③発生した場合の負傷・疾病の重篤度や発生の可能性の度合いを評価し、その評価結果を踏まえて、労働者の化学物質へのばく露防止のために必要な措置を講じなければなりません。
化学物質による労働災害は、その危険性、有害性を知らなければ防止できません。
取り扱う化学物質について、リスクアセスメント及び評価に基づく措置を確実に実施する体制を確立し、取り扱う従業員がその危険性、有害性や取り扱い上の注意点等を十分理解できるように安全衛生教育を実施することが必要です。
(文責)相談員 中山 絹代