『作業場に必要な照明について』
今年もいよいよ冬本番となり、灯火の下での作業時間が長くなって来ました。
今回は作業環境として極めて重要な作業場の照明について、気がついたことを述べてみたいと思います。
今回は作業環境として極めて重要な作業場の照明について、気がついたことを述べてみたいと思います。
労働安全衛生規則第604条には、労働者を常時就業させる場所の作業面の「照度」の基準が定められていて、「精密な作業」300ルックス(Lx)以上、「普通の作業」150Lx以上、「粗な作業」70Lx以上となっています。また、事務所衛生基準規則第10条にも、同様の照度基準が定められております。実際に測定してみますと500Lx~1,200Lxに大きくばらついており、古いビルは一般に暗めで、最近建築したビルは高くなっています。
事務所の照度は、実際どのようになっているのでしょうか。ビルの新築時に照明設計者が準拠する規格はJIS Z9110 です。この基準は事務所(a)(営業室、設計室、玄関ホール) 750Lx~1,500Lx、事務所(b)(役員室、会議室、電算機室等)300Lx~750Lxです。照明の照度はランプを交換した時の初期照度から、ランプの寿命に達するまでの間、徐々に暗くなり、寿命のときの照度がJISで定める値になるように設計します。つまり、照度は常に設計値より明るくなっています。
事務所の作業では、パソコンに向かう作業が多く、その照明が作業環境として重要になります。「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(H14年4月)では、VDT作業に適した作業環境として、「室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること」、「ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること」「ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること」などを推奨しております。また、「グレアの防止」としてディスプレイについては、「反射防止型ディスプレイを用いること」、「間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること」、等を定めております。ここでグレアとは、「まぶしさ」のことでディスプレイ画面に照明の光が映り込んで、画面の文字が読みにくくなることです。反射防止型ディスプレイは照明の光は映りますが、傘を被った満月のように画像がぼやけて、まぶしさはほとんど感じられません。
事務所の作業環境としての照明は、以上述べたことを勘案しながら、天井照明で部屋全体の雰囲気の照明を行い、作業に適した照明は、電気スタンドのように個人が作業のし易い明るさと方向から光が得られるタスク・アンビエント照明(作業する明るさと周囲の明るさを別にする照明)が最も優れていると思います。
昨年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響で、全国的の原発が停止し、節電への協力が要請されております。節電対策として照明器具の間引きが行われております。一部のビル等では廊下等の照明をほとんど消して薄暗くなっているところも見受けられます。明らかに労働安全衛生規則の粗い作業の70L以上を満足していません。廊下や階段で歩行者が躓いて転倒して労働災害になりかねない状況のところがありました。
一方、節電や省エネ対策から、事務所や工場で急激にLEDランプが採用されるようになりました。LEDランプの寿命は40,000時間で蛍光灯の12,000時間と比較し、3.3倍も長持ちします。高所にあるランプの交換時は脚立等からの転落の危険性がありますので、長寿命のランプは安全上大きなメリットがあります。
最近LEDの光に含まれる青色の光が目に悪いといわれ、パソコン、テレビ、スマホ等の液晶画面から出る青色光が取り上げられています。液晶画面の裏にはLEDランプが入っているものがあり、その光が目に入ります。青い光は本当に目に悪いか否かは専門の方にお任せするとします。LEDの白色光は青色光と黄色光を混合して白くしています。従ってLEDの光の中には青色は多く含まれております。
古い形の蛍光灯の光は「ちらつき」が生じます。LEDランプにするとランプに流れる電流は常に一定のため明るさにちらつきがなくなり、動くものが見え易くなります。
LEDのもう一つの特徴は、光に紫外線が含まれていません。美術館などでは絵画の色が褪せないために採用されています。その意味では目に優しい光であると言えます。
以上は常日頃灯火の下でパソコンを操りながら照明について思っていることを述べました。
(文責)相談員 鶴岡 寛治