『「不快な口臭」の予防』
つい最近、仲間内でこんな話題がありました。ある小規模事業所の管理監督者から、中途採用の社員の口臭があまりにもひどくて、職場の全員から「気分が悪くなり、仕事にならない、どうにかしてくれ」と訴えがあり、その口臭が理由で退職者が出始めたとのこと。管理監督者も不快な口臭に我慢の限界にきていたが、口臭を放つ社員にどう切り出していいかわからずにいた。思案の末相談に来られたとのことでした。
この話を聞いていて、ここ迄ひどくなくても口臭の不快感は日常よくあり、多くの人が、経験しているのではないかと思いました。自分では気づかないまま人を不快にさせている事を他人事ではなく、もしかしたら、自分もという気持ちで受け止めた方 がよいのではないかと痛感しました。
ひどい口臭は、病気のシグナルの場合もあるので、保健指導に役立つ「口臭の原因と予防」について記す事にしました。
Ⅰ 口臭のタイプ別に疑われる病気
- 甘酸っぱい臭い:甘い酸っぱい様な口臭は糖尿病の疑いがあります。また、間違ったダイエットをしている人も同じ様な口臭がすることがあります。その理由は、炭水化物やたんぱく質が不足し、身を守るために中性脂肪が燃焼し、臭いを放つ脂肪酸に変化するからです。
- 腐った卵の臭い:胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍など胃腸の病気にかかっていると独特の口臭がします。消化不良のため食べ物が異常発酵し、臭い物質が血流に乗って肺に送られ、呼気や口臭になって感じることになります。
- カビ臭:肝機能低下や慢性肝炎があると、カビ臭い口臭がすることがあります。肝臓で分解される筈の臭い物質が分解しきれず口臭に現れるようになります。
- 腐った肉のような臭い:口内炎・歯肉炎・歯槽膿漏などの口の中の病気、副鼻腔炎・鼻炎・扁桃腺炎などの鼻やのどの病気、肺炎・気管支炎などの呼吸器系の病気が疑われます。
- アンモニア臭:アンモニアのツンとした様な口臭は、腎機能低下や尿毒症が疑われます。
Ⅱ 口臭の多くは口の中に原因がある
臭いの元は、歯についた歯垢や歯石です。歯の表面に付着する白くて柔らかい沈殿物を歯垢といいます。これは、口の中の食べカスを餌にして増殖した細菌の塊なのです。歯磨きを怠り、歯垢を放置しておくと唾液に含まれるカルシウムを吸着して石灰化し、歯石に変化します。歯垢や歯石は虫歯・歯周病の原因である上、口臭を発生させます。また、ブリッジが古くなり食べカスが詰まって虫歯や歯周病になっていることもあり、この場合はかなりの口臭をともないます。義歯も手入れを怠ると臭い発生の原因になります。
Ⅲ 口臭の予防
- 規則正しい食事:不規則な食生活は、口臭をひどくします。口臭を抑えるには唾液の分泌を盛んにすることが第一です。朝食抜きは唾液の分泌が促進されず、口中の雑菌は減りません。栄養バランスを考えて、できるだけ多種類の食品をとること、胃に負担をかけないため就寝の2時間前からは食べないようにして睡眠中の胃を休ませてあげることなどが大事です。口臭予防には、アルカリ性食品を多くとるようにするとよいです。アルカリ性食品の代表はカルシウム、ナトリウム、カリウムでこれらを多く含む食品は緑黄色野菜や海藻類です。野菜を摂れない場合は、せめてこれらを含む青汁や野菜ジュースなどの葉緑素飲料を常飲するとよいです。歯ごたえのある物や繊維質の物は、しっかり噛むことで唾液の分泌を促すという効果もあります。
- 口腔ケア:毎食後の歯磨きは理想ですが、勤務中や食事会など、歯磨きが出来ない場合が多々あります。そんな時は、口臭予防効果の高いガムやタブレット、スプレーなどを使うと便利です。歯磨きは、歯ブラシだけでなく、糸楊枝や歯間ブラシとの併用がおすすめです。また、舌苔が多くなればなるほど口臭は発生しやすいです。舌苔は、舌の表面に口の中の細菌や新陳代謝によって剥がれた上皮細胞などが舌の表面に付着したものです。定期的な舌の掃除も心がけるとよいです。週に一回を目安に、ガーゼやタオル地のハンカチを指に巻いて優しくこするとよいでしょう。
<口臭の有無や強弱は健康のバロメータです。保健指導の前に先ずはご自分のチェックから>
参考文献:「口臭・体臭・加齢臭」五味常明 旬報社
(文責)相談員 谷田 久美子