相談員コラム
2022年夏は「猛暑」「節電」「マスク」「コロナ予防」の中の熱中症対策
産業保健相談員 池田 智子
「ラニーニャ猛暑」が予測される今夏は、同時に深刻な電力不足の為「節電要請」に応え、また習慣化された「マスク着用」をしながら過ごすことになる。つまり熱中症リスクは例年以上に高まる。加えて新型コロナウィルス感染症初期症状と熱中症の症状が似ているという混乱も想定される。各課題への対策を以下にまとめた。
1.政府が7年ぶりに節電要請
3月の福島沖地震で損傷した発電所復旧の遅れやウクライナ危機の燃料供給リスクなど、エネルギーを巡る課題の深刻化により、2022年夏季の電力需給は厳しく、冬季はさらに厳しいと見込まれたことによる。
<対策>経産省の要請は「室内温度を28度に」であるが、これは「エアコン設定温度を28度に」ということではない。あくまで目安であり、同じ気温でも湿度、日射や輻射の総合である『暑さ指数』(WBGT値)で考えた方がよい。
「直射日光が入りにくい」「樹木の陰ができる」「風通しが良い」「湿気が少ない」「屋外ではマスクを外す」等の工夫だけでも熱中症の危険度は下がる。
2.「マスク熱中症対策」だけではない「脱マスク」を巡る繊細な問題
サージカルマスク着用者は非着用者に比べ熱中症リスクが高まるとの研究結果を受け厚労省は「屋外で、周囲の人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合にはマスクを外すようにしましょう」と呼びかけた。
しかし「屋外での脱マスクを再三呼び掛けるが、応じる動きは少ない」という現象が、特に若年層や女性に多い現実があった。そこには「感染が怖い」「同調圧力」だけではなく、「素顔を見られるのが怖い」「人目が怖い」等心理的問題が存在し、特に中学生、高校生から若年労働者に多く見られた。
<対策>教育現場では「マスクを外す判断は子どもの気持ちを尊重しつつ熱中症対策のため一人一人の様子をしっかり見て対応したい」と教員方々が努力されていた。マスクが習慣化されてしまった現在で「脱マスク」の新たな習慣を推めるためにも一朝一夕には行かず、根気よく期間を要するものと職場の管理職の皆様には認識されたい。
- コロナ初期症状と熱中症の症状は似ている
「息苦しさ(呼吸困難)」「強いだるさ(倦怠感)」「高熱」等の症状は、熱中症とコロナ初期症状は似ていて、2020年には、救急車がどちらの外来に搬送するか混乱した事例が多発した。
<対策>日頃から「体温・体調・外出や人との接触の記録」をメモし携帯しておくと、救急診療を受ける際にも判断の助けになる。
以上、今夏の課題と対策をまとめた。基本的事項として以下2点をお勧めする。
- 日頃から汗をかく習慣をつけ、暑さへの順化を高めましょう。
涼しい時間に日陰で、無理のない範囲で運動をしましょう。
- 脳が「涼しいな~」とカン違いする工夫をしましょう。
噴水や風鈴、すだれやよしず、アサガオ、かき氷など脳の錯覚を呼び起こす工夫をしてみましょう。