相談員コラム
新型コロナウイルス感染症対策における産業保健看護職の役割
3年前の新型コロナウイルス感染症の発生に伴い、生活も働き方も多様化し、産業保健活動も複雑多岐になりました。今回の第7波による感染再拡大は、再び現場で働く産業保健看護職を悩ませました。政府の「感染症対策と社会経済活動の両立」という方針のもと、自事業場における感染対策をどのように実施すべきか、私も悩んでいる一人です。
幾度となく感染拡大が繰り返される中、これまで対応してきたことを振り返り、産業保健看護職のはたすべき役割について考えてみました。
事業者が正しい情報に基づき、適切な判断をすることが事業継続には重要です。医療の専門職として最新の情報入手を心がけ、内容の良し悪しを判断し提供する役割があります。常にアンテナを高くし、情報の入手先をも見極めることも必要となります。
産業保健看護職の最も得意とする能力でもあり役割です。感染者への対応においては本人と職場、人事部門との調整、感染症の対応策においては会社のリスク部門等関連する部門と産業医の先生を中心とした健康管理部門との連携や調整のハブとなって機能する役割も期待されています。
フェーズが変われば、対応策も変わります。初期は衛生資材の調達や消毒、情報収集に専念し、そして徐々に経営層や労働者への適切な情報提供、感染症対策マニュアルづくりや体制整備へと遷移していきます。日々の感染状況や国の動きをタイムリーにキャッチして、今何をすべきかを判断し、タイミングを見計らって必要時は対応策の変更も提案できる力も必要です。
頭でっかちの施策では実効性に乏しくなりがちです。現場で何が起こっているのか状況の把握と労働者の声を聞きとり届けることも産業保健看護職の役割です。時には対策を講じる際の、軌道修正につながることもあります。
感染対策に集中するのは初期フェーズであり、その後は状況をみながら、優先順位をつけてなるべくはやく通常業務を再開できるのが望ましいと考えます。結局のところ、健康診断の事後措置や保健指導、復職支援や両立支援、健康教育など日ごろの健康支援活動をしっかり実施することが、健康管理に関する意識の醸成や基本的行動につながり、結果的に感染防止につながります。普段できないことは有事にもできないものです。
参考:一般社団法人 日本渡航医学会
公益社団法人 日本産業衛生学会
職域のための 新型コロナウイルス感染症対策ガイド
https://www.sanei.or.jp/files/topics/covid/COVID-19guide-add220401koukai.pdf