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産業保健看護職のひろば

相談員コラム

職場のメンタルヘルス対策 -こんな場合…どうする?-
2022-10-18
職場のメンタルヘルス対策
―こんな場合… どうする?―
 
9月に当センターで実施したWebオンライン研修「メンタルヘルス不調者の職場復帰支援」にて、看護職の受講者から、皆様にも参考になるご質問をいただきましたので共有させていただきます。
なお、回答は当センターの相談員で、研修講師を務めていただいた村上太三先生によるものです。
 

主治医と産業医が「復職可」と判断した後、

会社都合で実際の復帰時期が1~2か月後になった場合…

 
Q 復職時期の延期について、本人や家族から訴えられるリスクはありますか?
A 会社が元々規定したルールに基づき遅滞なく対応していれば、1か月前後であれば問題ありません。
また、細かいルールを決めなくても、少なくとも、『改定 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(厚労省)の手順に基づき判断を進める点を明確に本人や家族、主治医に説明しておき、淡々と対応を進めていけば、問題ないと考えます。
逆に事前の説明をしていないと、感情的な考えや判断(たとえば、「主治医が復職を許可しているのになぜ、会社に復職できないのか?」とか「主治医が指導しているのになぜ、会社はその指示に従わないのか?」「会社は医者の意見を聞かないのはおかしい(主治医含めての主張)」など)を本人、家族、主治医から投げかけられ、もめごとになる可能性はありますのでご注意ください。
復職時期が2か月ほどに及ぶ場合もあります。その際はそれなりの理由や対応が必要と思います。例えば、2か月かかっても会社や産業医が復職に必要な状況判断作業を、本人も巻き込んで適切に実施しているなら問題ないと考えます。
繰り返しの内容になりますが、家族からのクレームを防止する上で、休み入りもしくは休み中に『改定 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(厚労省)を教えておく、もしくは会社の復職の手続きのルールを決めて、会社の復職手順と手続、かかるおおよその日程を開示しておくことが大切と思います。
通常の社員教育で周知しておくこともいいことです。
 
Q 復職するまで傷病手当金は継続して受けられますか?
A 事情を話せば、多くの主治医は傷病手当を継続してくれます。
主治医は復職可の診断書を出した後でも、会社の復職手続きや判断に時間がかかる場合は、通常、きちんと証明してくれます。
復職可の診断書と傷病手当金支給申請書の医師の証明は別物ですので日時がずれても問題ありません。
しかし稀に、自分の診断書のあとの傷病手当金の医師の証明を拒否する医師もいます。
また、主治医の復職可の判断に対して産業医が復職不可とする、あるいは会社が不可とする場合もあります。
その場合、以下の対応があります。
  • 産業医が会社内の企業内診療所(診療所登録している)の医師であれば主治医に成り代わって傷病手当金支給申請書の医師の証明を書くことは可能
  • 産業医が診療行為をしてない場合、健康保険組合の判断で、産業医から別書面にて証明もしくは説明する書面を受け取り、支給の判断材料とすることが許されています。

参考:事 務 連 絡 平成 26 年9月1日 厚生労働省保険局保険課「傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて」(  全国健康保険協会宛) (  健康保険組合宛)

 

実際の経験として、
・主治医が自分の復職可能の診断書発行後、診断書発行後の期間について傷病手当の医師の証明を書かなかったケース
・病気治療について、社員が治療態度について主治医のお叱りを受けて、療養の途中期間(たとえば、主治医指示に本人が従わず未受診として解釈された期間など)について主治医が証明してくれなかったケースや、休務中の主治医変更により、変更したタイミングで前後の主治医どちらも休務を証明できない期間が生じた場合など、会社および社員から事情説明を受けてた上で依頼された時など、産業医として別書式にて証明(意見書)を出したことがあります。
※この場合、いずれも会社は主治医が認めてくださらなかった「未受診期間」も療養を継続していたと判断してくれたということです。
 
ですので、こうした対応が可能であることを知識として持っておくとよいです。
 
Q 復職にあたり、本人が復職の意思表示をしますが、それは職場の上司や人事へ口頭での意思表示でも問題はないでしょうか?
A 書面の方がいいと思います。
休職指示書(休職可能期間・期限や復職の手順、必要書類などのインフォメーション)と、復職希望届は整備した方がいいです。
主治医の診断書で代用可能とも考えられますが、本人の意思表示を明確にする意味でも、本人からの復職希望を表明する書類はあったほうがいいと考えています。
また、初めの復職判定期間についての質問にもかかわりますが、いつから復職の手続きが始まったかを明確にするためにも書面の方がいいです。
 

以上

独立行政法人 労働者健康安全機構
神奈川産業保健総合支援センター
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