相談員コラム
ウェルビーイング
~まずは自分から、幸せに働く実践者になる~
相談員 松尾玲奈
最近、産業保健専門職の中でもウェルビーイング(well-being)への関心が高まっています。
同時に、長期的な幸せという、広い意味でウェルビーイングを捉えて、関連する事例や知見を活かしていこうという個人や組織が増えてきました。
ウェルビーイングという単語は、ご存知のとおり、世界保健機関(WHO)の健康の定義でも使用されています。そのため、ウェルビーイングが注目される以前から、私たち産業保健看護職にとって、対象者や集団の健康(身体的、心理的、社会的なウェルビーイング)を目指すことはごく自然なことでした。では皆さん自身は、幸せに働いていますか。
産業保健の現場では、法令遵守や、年間計画で決められたことを進めながら、日常的に生じる社会や組織の変化への適応、個別の困難事例、知識がまだ不十分な領域への対処など、求められることは多岐に渡ります。その結果、「法令遵守」「計画で決まっているから仕方なく」といったように、いつの間にか、本来目的を果たすための手段にすぎない、計画や作業を終わらせることに、追われて必死になっている場合も少なくありません。
かくいう私も、組織に所属していた時は、ため息交じりに「もう◯月か・・・そろそろ、あの準備(まとめ)に取り掛からないと」と、やらされ感満載で、目的を見失ったまま取り組んでいたこともありました。一方で、同じようなことでも、「大変そうだけどやってみよう」「法令や書籍、事例などを調べながらやれば何とかなる!」「信頼して私に任せてもらえてありがたい」といった気持ちで取り組んだ仕事は、充実感をもたらしていたように思います。
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は、幸せの4つの因子として
①やってみよう因子(自己実現と成長)
②ありがとう因子(つながりと感謝)
③なんとかなる因子(前向きと楽観)
④ありのままに因子(独立と自分らしさ)
をあげています。このいずれかではなく、4つの因子を満たしている人は幸福感を持つ傾向にあるようです。先ほどの私の経験からもこれらの因子を見出すことができます。
このほか、幸せな従業員は不幸せな従業員に比べて、創造性と生産性が高く、欠勤率や離職率が低く、業務中の災害発生も少ないということも明らかになっています。当然ながら、ここでいう、幸せな人や組織は、楽な仕事の人、楽できる職場のことではありません。先ほどの4因子にもあるように、幸せな労働者は、自分らしさを大切にしながらも、チャレンジ精神が強く、利他的で、モチベーションが高い、といった特徴があります。
まずは、自分自身のウェルビーイングを高めることからはじめませんか。例えば、1人職場のため活動面で孤独感や困難な課題を抱えている産業保健看護職の方などはぜひ、事業場外の「つながり」の1つとして、当センターの相談窓口や研修をご活用ください。