相談員コラム
転機との向き合い方
相談員 山下奈々
春になると、異動や転職、昇進などの節目を迎える方が多い季節です。年が明けてから心が落ち着かない日々が続いている方もいらっしゃるかと思います。予期せぬ出来事に対して、どのように対処するのか、支援する側や自分でできることについてご紹介したいと思います。
転機の理論はいくつかありますが、ナンシー・K・シュロスバーグの理論を紹介します。転機を人生上の出来事と捉え、急速に変化する社会において人が様々な挑戦を受けている中で、人生において何が起こっているのかを探索し、理解し、対処できるようになると構築したのがシュロスバーグの理論です。シュロスバーグは転機にある個人や転機自体の内容は各々異なりますが、理解するための構造や切り口は同じと述べています。以下、紹介します。
1. 転機へのアプローチ
①転機の識別
シュロスバーグは転機を3つのタイプに分けられると述べています。
・予測していた転機(結婚、転勤、昇進)
・予測していなかった転機(失業、病気、突然の異動)
・期待していたものが起こらなかった転機(子どもが授かれない、昇進するはずがなかった)
自分にとっての転機はどのタイプに該当するのか、背景やどの程度の重大さを持つかを識別していくことが必要です。
②転機のプロセス
どのような転機でも最初の段階は、転機の始まりか終わりであり、転機の最中では、生活とのバランスをどうとっていくか、援助を受けているのか、挑戦を受けているのかという問題に直面することもあり、自分は転機のどの位置にいるかを見極めることも大事となっています。
2. 対処のための資源を活用する
この転機を乗り切るためのリソースは何か、4つのSで点検、活用すると良いと言われています。
・状況(Situation 自分の状況を把握する。役割の変化を引き起こしているのか、今の状況を予期していたか? どのくらい続くのか、前向きに捉えているのか、後ろ向きか)
・自己(Self 自分の現在の興味やスキル、経験、価値観などを振り返る、自分自身を勇気づけることができるか)
・支援(Support 友人や家族から支援が得られるか、ネットワークはどんなものがあるのか、転機によって失ってしまうものはあるか)
・戦略(Strategies 今後、どんな戦略ができそうか、時々は転機を変化させるような行動を取っているか、ストレスを切り抜けるように試みているか)
3. 転機に対処する
資源を強化していくことは新しい戦略をとることです。転機がコントロールできないものであっても、その転機をどう取り扱ったら良いか、その方法はコントロールできるものであると考えられています。
従業員から相談を受けた時のアセスメントの1つとして活用いただければ幸いです。
参考文献:新版 キャリアの心理学 キャリア支援への発達的アプローチ