相談員コラム
「ヘルスリテラシー向上のために出来ること」
産業保健相談員 中野 みどり
最近は健康経営に関わる産業看護職も多く、「ヘルスリテラシー」への関心も高まっているようです。先日、順天堂大学の福田教授のご講演を機に、ヘルスリステラシーに関して学ばせて頂きましたので、紹介させて頂きます。
ヘルスリテラシーとは、「良い健康を維持促進するために情報へアクセスし、理解し、活用する動機付けと能力を決定する認知的、社会的スキル」(WHO定義)
健康経営優良法人の認定要件にも、健康経営の実践に向けた土台づくりとして「ヘルスリテラシーの向上」が含まれており、企業の業績向上のためには、従業員の健康管理・維持へ投資を行うことが重要と言われています。
それでは現代日本人のリテラシーはどうでしょうか。
2023年にジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーが6か国を対象にヘルスリテラシー国際調査を実施したところ、日本のヘルスリテラシー自己評価は10点満点中5.4点で、6か国で最も低い点数だったとのことです。
「参考」中国(1位7.8)アメリカ(2位7.6) イギリス(3位7.4)
フィンランド(4位7.2) オーストラリア(4位7.1)
ヘルスリテラシーが低い際のデメリット
・予防サービス(健康診断・ワクチン接種)を利用しない
・治療や薬などの適切な知識に乏しい
・病気やケガの兆候に気付きにくく悪化させやすい
・労働災害が発生しやすくなる
・救急サービスを利用しやすい
・医療費が高くなる
ヘルスリテラシーの活用(福田先生資料より)
「リテラシーを高めよう」ではなく、その前にやるべき5つのステップ
1.相手のヘルスリテラシーレベルを「知る」
2.相手のヘルスリテラシーレベルに「合わせる」
3.必要なヘルスリテラシーのハードルを「下げる」
4.ヘルスリテラシーを「高める」
5.ヘルスリテラシーを「広める」
ポイントは、4.「高める」の手前に三つのステップがあること。
企業の健康施策では、いきなり「高める」に着手しがちですが、まずは従業員のヘルスリテラシーレベルを調査し、実態を「知る」ことから始める必要があるそうです。
現代社会において、増え続ける医療費、そして高齢化社会──。長寿がもたらす二つの難問、その答えとされるのが予防医学で、労働人口の減少に伴い、生涯現役を目指して働きやすい職場環境づくりや、健康づくりが企業には求められています。
福田先生はヘルスリテラシー向上のためには、全く新しいことを始める必要はなく、いままでやっている産業保活動を、5つのステップに照らし合わせて再構築するだけでもよい。小さな事業所でもその企業らしく、時間をかけて取り組むこと。できることをひとつひとつやっていく、それが大きな資産になると仰っています。
長年産業医として活動をされ、実際にリテラシー向上の結果を見てこられた先生のご講演は、説得力があり、日々の積み重ねの大切さを実感いたしました。