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相談員から一言 バックナンバー

1)内臓脂肪沈着(腸間膜脂肪細胞内脂肪沈着)会では認知症の危険も出てきます。

脂肪細胞に中性脂肪が増加してくる状態で遊離脂肪酸の増加が起きやすくインスリン抵抗性となりやすい状況となります。マクロファージが出現していない状態であり悪さをしていない肥満です。ここで、HbA1c5.7以上となる病態では異所性脂肪沈着を引き起こしてきます。脂肪肝を認め2型糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、癌(胃、大腸、肝臓、膵臓、胆管など)のリスクが高くなります。働き盛りは食事の時間も早食いで運動する時間も取れなくなることが多くなります。役職がついてくるとサービス残業も多くなり脂肪沈着の危険が増してきます。
腹部MRI画像で腸間膜の脂肪沈着

2)異所性脂肪沈着(脂肪細胞のない肝細胞に脂肪沈着)

脂肪沈着が異物と判断されマクロファージの影響を受けて各臓器に炎症反応が出現しこれがメタボリック症候群として一般的に言われる状態です。
超音波検査で肝臓、腎臓のコントラストを比較画像です。肝臓に脂肪沈着が起きて肝機能障害が出現していますが、右側の超音波画像で診られるように肝腎コントラストが改善しています。運動指導により約1年間で早期脂肪肝炎は改善しています。
脂肪肝になると血中フェリチンが増加するために鉄分の肝細胞内鉄沈着が起きてきます。肝硬変が悪化するために鉄分摂取に注意が必要となります。緑色の濃い野菜、海藻類、肉(モツ類の過剰摂取に要注意)となります。健康のためのサプリメントも悪さをしている状態もでてきます。1日の鉄分摂取量は成人男性で10㎎、成人女性で12㎎、妊娠女性では20㎎となります。
a)血中フェリチン値が高い状態で脂肪肝を認め、肝機能障害を認める男性(300ng/ml以上)女性(200ng/ml以上)は鉄分の過剰摂取に要注意となります。
b)血中インスリン濃度の増加(インスリン抵抗性の憎悪)
空腹時IRI 10μU/ml以上、HbA1c 5.7%以上の病態と食後の高血糖が2時間たっても140㎎/dl 以上の病態を示します。食後高血糖が続いていてインスリンの利きが悪い病態は異所性脂肪沈着を起こします。
b)4型コラーゲン7Sの増加 繊維化の増加 (試験薬不足のため4型コラーゲン・7S検査が中止)
4型コラーゲン7S 5.0ng/ml以上
a),b),c)が揃うと肝硬変に進行します。緑色の濃い抹茶、緑色の濃い野菜、海藻類の取りすぎは日本人には過剰摂取となる危険があります。サプリメントの過剰摂取にも要注意です。

3)頸動脈超音波検査(プラーク):血管内に貯まった脂肪で粥状硬化症(異所性脂肪沈着)

a)治療前(プラークの黒い変化は脂肪沈着のため)
b)治療後半年(プラーク内が白くなり脂肪沈着の改善)
異所性脂肪沈着は改善してプラークの退縮を見る。また繊維化を起こしプラークが安定化する。心筋梗塞、脳梗塞症の予防につながる動脈硬化の診断と治療につながる。

4)心筋内脂肪沈着

画像診断が難しく、高価なMRIによる特殊検査となります。

5)膵脂肪沈着

図1膵ランゲルハンス島内の脂肪沈着とマクロファージの出現を見る。インスリン抵抗性とインスリン分泌不全がおきている。HbA1c 5.7%以上は脂肪沈着を起こすのでランゲルハンス島内の脂肪沈着をできるだけ早期から脂肪沈着の改善が必要です。ちょっと糖尿病の気がありますね。で放置されるのは膵脂肪沈着を進行させる医療関係者の責任です。(2型糖尿病の悪化)
腹部超音波検査で膵臓が白く診えてきますが胃や腸により非常に見えにくい臓器です。
ここに膵臓の正常者ランゲルハンス島と2型糖尿病患者さんのランゲルハンス島の病理画像を示します。 糖尿病になると膵β細胞は壊されて脂肪沈着が認められます。この病態になるからインスリン分泌が減少してきます。さらに進行すると生命維持のためのインスリン量が減少してしまうのでインスリン注射が必要となるのです。

6)筋肉内脂肪沈着

インスリン抵抗性の治療
4~5年前に産業保健推進センターの相談員の一言で述べさせていただいた『10時、3時はおやつの時間ではなく歩く時間でしょ!!』の理論をここで述べてみましょう。
次に示す図2のグラフを説明してみます。
HbA1c6.4%の58歳、BMI 26,5男性に持続血糖測定可能な器械で血糖変動を見てみますとまず食前血糖値は103mg/dlで食後1時間の血糖値が165mg/dl、ついで食後2時間の血糖値は184mg/dlでありました。わたくしの前号で述べた如く血中インスリン値が30μU/ml以上になる時間帯に速歩を開始しました。運動開始後5分では181mg/dl、10分後172mg/dl、15分後153mg/dl、20分後141mg/dl、25分後132mg/dl、30分後132mg/dlと血糖変動が急に運動効果が上がらなくなりました。インスリンを使い切ってしまったのです。さらに同じ強度の運動を続けていきました。35分後131mg/dl、40分後129mg/dl、45分後130mg/dl、50分後130mg/dl、55分後135mg/dl、60分後133mg/dl、ここで運動を中止しました。運動開始30分後から運動終了の60分後までの血糖変動は速歩を続けているにもかかわらず変動は見られませんでした。驚くことに運動終了5分後133mg/dl、10分後128mg/dl、15分後112mg/dl、20分後89mg/dlと血糖値の低下がみられました。これは30分の運動でも運動中止するとインスリン抵抗性が改善した効果と考えます。30分以上の運動効果は血糖変動の急性効果はなくなるものと考えます。即ち食後2~3時間での運動効果がより効果的でありインスリン抵抗性を改善するものと考えます。即ちHbA1c5.7%以上は、『ちょっと糖尿病の気がありますよ!』ではなく『脂肪沈着の始まりですよ!』と考えてください。
 
図2
運動指導は朝食後、昼食後、夕食後2時間たってからの運動がより効果が出ます。夕食後2時間は夜寝る前の歩行となります。しかし地方によっては夕食後2時間たってからの運動は暗くて物騒です。歩く環境づくりは地方自治体による健康推進力が必要となります。仕事をしている方の健康づくりは夜寝る前の軽い運動(歩行)が一番効果の出る時間帯なのです。しかも15分~30分間の運動で済むのです。
先日TV放送で『運動は食後30分で行いなさい』と恰も当然のごとく放映されていました。食後30分ではインスリン分泌も少ないうちでしかもグルカゴン分泌が増加しているときの運動ですから血糖値は上昇してきます。しかも、内臓の血流が筋肉に取られてしまい臓器血流が低下してしまい禁忌とされている時間帯です。TVの健康番組を見ている老人が知ったかぶりで頑として聞く耳を持たない方が増えているのが問題です。医学番組を放映する場合は監修医師の名前を明記してもらいたいです。
 
図3 食後2~3時間が運動の時間帯となる理由
ちょっと糖尿病の気がありますね。と言われている67歳女性です。初診時の患者さんの血糖値、C-ペプチド、血中インスリン濃度、グルカゴン濃度の変化を示しています。血糖値は食後2時間がピークです。C-ペプチド値 は3時間後も上昇傾向にあります。血中グルカゴン濃度に関しては食後1時間まで上昇傾向にあります。運動の効果を見ていくには血中インスリン濃度の変化を観ていきますと3時間値も上昇傾向にありますが30μU/ml以上になってくると運動時筋肉でインスリンが使われて筋肉内に糖が取り込まれていきます。血糖が取り込まれるときに血中インスリン濃度が30μU/ml以上が必要でしかも運動で血糖が取り込まれる時間は約30分間です。それ以上の運動は図3で分かるように血糖は下がりません。インスリンにより抑えられていたホルモンが増加してきます。血糖上昇させるホルモンの出現です。運動を中止すると血糖上昇ホルモンが低下して、インスリン基礎分泌の影響を受けて血糖が再度取り込まれてきます。図2で示されています。
 
図4では図3の説明をさらにグラフ化して正常者の血糖変動とインスリン変動を示しています。
会社健診で空腹時血糖測定ではかなりランゲルハンス島に脂肪沈着が進行してしまって、糖尿病が発症してからの治療となってしまいます。食後2時間の血糖値か、或いはHbA1cの測定をしなければ異所性脂肪沈着の予測は難しくなっております。何せ高血圧症発症の時点でインスリン抵抗性と脂肪肝に罹患している状態が多いことに気づかれるでしょう。まず、健康診断でHbA1c5.7%以上は腹部超音波検査で脂肪肝の診断と膵臓の輝度の上昇を診断して生活習慣の改善に取り組むことで異所性脂肪沈着の改善を目的とした改善が医療費の削減にも影響を与えてきます。それでも効果がない時には薬剤治療になります。安易に血中インスリン濃度の上昇を試みると脂肪沈着が進行してしまいます。まずは、インスリン抵抗性の改善から生活習慣を変えましょう。
『Diabetes Care Volume 40, Supplement 1,January 2017』(アメリカ糖尿病学会誌の報告によればアジア系民族はインスリン抵抗性が強いために、HbA1c5.7%以上は異常値と判定すると述べ、また45歳以上はHbA1cの検査は全員行うべきであると報告しています。

(文責)相談員 倉田 達明
独立行政法人 労働者健康安全機構
神奈川産業保健総合支援センター
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